朝鮮通信使の演劇を見る機会がありました。日本と韓国(朝鮮)の伝統芸能を融合させた歌と踊りの演劇でした。
舞物語 朝鮮通信使
江戸時代、第11次朝鮮通信使の一員として日本へ渡った楽士の話を題材に舞物語が展開されました。実話なのかは不明ですが、日本人として生を受けて、時代に翻弄されながら朝鮮に移住し、朝鮮通信使として日本に再度訪れる男が主人公の話でした。
男の家族は日本に、妻は朝鮮人という、当時からしたら特殊な状況で、自分の正体とは何なのかなどと感じながら過ごす男の心情が演劇に盛り込まれていました。
留学したころに、第二言語習得論の授業で、第二言語とアイデンティティの話を学習したことがあります。自分が日本人として生まれ、日本国内で教育を受けてきたこともあって、自分のアイデンティティに疑問や不安を持った経験があまりなかったため、当時はそれほど深刻に受け止めてはいないテーマでした。
ただ、「国」という視点に立った際には悩みの多いテーマになるのだろうなと感じました。
発声と音
会場は能楽堂に使用されるホールでした。思えば、日本人のアイデンティティと書きながら、日本の伝統芸能である能を、実際にホールで見るのは初めての経験だったように思います。
小太鼓の音と男性の発声を聴きながら、「いよーっ」という発生をするのも技術がいるのだろうなと思いました。日本と朝鮮の伝統芸能をミックスさせるというのは、どちらの文化にも精通していないとできることではありません。感動しながら鑑賞することができました。