「使い捨てられる教師たち」を読み終えました。教育とお金の話はタブー扱いのようになっているのか、なかなか耳にする機会はありません。不勉強なもので総額裁量制度というのは初めて聞きました。
教採の倍率が3倍を切ると教師の質は担保できない?
私自身が教員採用試験を受験する頃にも耳にしていました。「教採の倍率が3倍を割り込むと教室の質は保証できなくなる。」まことしやかに囁かれ、聞いたことのある人もいることと思います。ただ、実際はどうなのでしょうか?
本書80ページでも指摘のある通り、現実の運用上は、学校現場に非正規で勤務をしている先生が大勢います。その人達の採用の倍率を含めるとかなり低くなるようです。(定員割れしているところもあるのではないでしょうか…)
事実、昨年度文部科学省が実施した『「教師不足」に関する実態調査』では、小学校では平均して不足率0.26%となっています。なり手がいないと叫ばれながらも持ちこたえている学校を見ると、「3倍の倍率」というのは特別な根拠はないのかとも感じています。
もちろん、絶対数が不足している、希望している人が少ないという現状は好ましくないので、改善が図られると良いと感じています。具体案がないのが厳しいところです。
総額裁量制度とは?
不勉強なもので今回の読書を通して初めて知りました。P.128に説明がある「総額裁量制度」ですが、これは2004年に導入された制度です。文部科学省のサイトでは下のような説明がされています。
国が定めた基準に従い算定された教職員給与費の総額の範囲内で、各都道府県・指定都市が地域や学校の実情を踏まえた特色ある教育が展開できるよう給与額や教職員配置について基本的に自由に決定することができる制度。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyuyo/__icsFiles/afieldfile/2017/09/14/1394395_03.pdf
これを適用することによって、教員一人当たりの給与を少し下げることにより教員数を増やすことが可能になります。その分で少人数教室の担当を増やすなどの処置がされてきたようです。
まとめと感想
今年いよいよ教職に就いて五年目になります。勤務時間は長いというのが正直なところです。こうして経緯を遡る本を読んでみることで、ただただ多忙になっているだけではなく、制度としても無理が生じつつあるということを感じることができました。
どんな制度にしても、本来の目的は子どもや教員がよりよい環境で教育に関わることができるようにするというものであったと思うので、現実は難しいものだと感じました。何よりも、「人」に対しての扱いが十分とはいえないところのある「臨任」の制度が少しでも変わると良くなるのかと感じました。